投資運用業登録とは?登録要件・制度改正・新規参入のポイントを行政書士が解説

 

こんにちは。

行政書士の秋元です。

「これまでの運用経験を生かして、独立系の資産運用会社を立ち上げたい」

「自社でファンドを組成し、投資家から資金を集める事業を検討している」

「投資運用業に関心はあるものの、必要な人材や資本金を考えると現実的ではないのではないか」

日本国内で資産運用ビジネスへの参入を検討する際、このような疑問や不安を持つ方も多いのではないでしょうか。

投資運用業をはじめとする金融商品取引業は、投資家の大切な資産を扱う事業です。

そのため、登録申請では、資本金だけでなく、役員や担当者の経験、コンプライアンス体制、収支計画、外部委託先の管理方法など、幅広い事項が確認されます。

一方、政府は「資産運用立国」の実現を掲げ、新たな運用会社が参入しやすい環境づくりを進めています。

2025年5月1日には、ミドル・バックオフィス業務の外部委託を促進する制度や、運用権限の全部委託に関する改正が施行されました。

投資運用業の登録が不要になったわけではありませんが、事業の設計によっては、従来よりも小規模で効率的な組織体制を検討しやすくなっています。

この記事では、国内で資産運用会社やファンドビジネスの立ち上げを検討している方に向けて、制度変更のポイントを分かりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 投資運用業の登録要件がなくなったわけではありません
  • 一定の管理業務を外部委託し、社内の人的負担を抑えられる可能性があります
  • 一定の投資運用業では、資本金・純財産額が1,000万円となる場合があります
  • 投資実行に関する権限を、別の運用会社へ全部委託できる仕組みがあります
  • 登録準備では、申請書より先に事業スキームを固めることが重要です

まず確認したい|どの登録が必要かは事業内容によって異なる

「ファンドビジネスを始めたい」と考えた場合でも、必要な登録は一つとは限りません。

誰から資金を集めるのか、誰が投資判断を行うのか、誰がファンドを販売するのかによって、必要となる登録区分が変わります。

第一種金融商品取引業

株式や債券など、金融商品取引法上の第一項有価証券の売買、媒介、引受けなどを行う場合に問題となる登録です。

取り扱う業務によっては、資本金・純財産額のほか、自己資本規制比率、顧客資産の分別管理、システム管理など、厳格な体制が求められます。

第二種金融商品取引業

組合型ファンドの持分や信託受益権など、金融商品取引法上の第二項有価証券を販売・勧誘する場合などに必要となる登録です。

例えば、自社が組成した組合型ファンドの出資持分を投資家へ勧誘する場合には、原則として第二種金融商品取引業が問題になります。

投資助言・代理業

顧客に対し、有価証券などの投資判断について助言を行い、その対価として報酬を受け取る場合などに必要となる登録です。

顧客にアドバイスをするだけで、実際の投資判断や売買権限を持たない点が、投資運用業との大きな違いです。

投資運用業

顧客から投資判断や運用権限の委任を受けて資産を運用する場合や、一定の組合型ファンドの財産を運用する場合などに必要となる登録です。

自社でファンドを組成する場合には、ファンド持分の募集に関する第二種金融商品取引業と、出資財産の運用に関する投資運用業の両方が関係することもあります。

登録区分を考えるときのポイント

登録の名称だけで判断するのではなく、実際に誰が募集・販売を行い、誰が投資判断を行うのかを整理することが重要です。

金融商品取引業者は現在どのくらい登録されている?

金融庁が公表している2026年6月30日現在の登録数は、次のとおりです。

登録区分 登録数
第一種金融商品取引業 290者
第二種金融商品取引業 1,230者
投資助言・代理業 1,004者
投資運用業 463者
金融商品取引業者の実数 1,954者

同じ事業者が、第二種金融商品取引業と投資運用業など、複数の登録を受けていることがあります。

そのため、各区分の登録数を合計しても、金融商品取引業者の実数とは一致しません。

第二種金融商品取引業者は第一種金融商品取引業者より多く登録されていますが、登録数だけで手続の難易度を比較することはできません。

取り扱う商品、顧客の属性、募集方法、顧客資産を預かるかどうかなどによって、必要な体制は大きく変わります。

結論|変わったのは「審査の厳しさ」ではなく「組織のつくり方」

今回の制度整備により、投資運用業の審査が簡単になった、あるいは登録要件が大幅に撤廃されたと考えるのは適切ではありません。

投資者保護のため、経営管理、コンプライアンス、利益相反管理、リスク管理、内部監査などの体制は、引き続き必要です。

一方で、大きく変わったのは、必要な機能をすべて自社の役職員だけで抱えるのではなく、外部の専門事業者との分業を前提とした体制を検討しやすくなったことです。

制度変更を検討しやすい事業者の例

  • 金融機関や運用会社での経験を生かして独立を検討している方
  • 特定の投資分野に強みを持つ少人数の運用チーム
  • ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ事業者
  • 不動産や事業承継など、特定分野のファンドを検討する事業会社
  • 新たに資産運用事業へ参入したい国内企業

ここからは、具体的な4つのポイントを見ていきましょう。

ポイント1|管理業務の外部委託で、人的体制を組みやすくなった

投資運用会社には、実際に投資判断を行う運用担当者だけでなく、コンプライアンス、計理、リスク管理、内部監査などの機能も求められます。

特に小規模な事業者にとっては、金融商品取引業の実務経験を持つ人材を複数採用することが、大きな負担になりやすい部分です。

そこで設けられたのが、投資運用関係業務受託業の登録制度です。

これは、投資運用会社などから次の業務を受託する事業者について、任意の登録制度を設けるものです。

  • 運用財産や投資信託財産に関する計理業務
  • 法令等を遵守させるための指導に関する業務

投資運用業を行おうとする事業者は、一定の業務を登録済みの投資運用関係業務受託業者へ委託することで、投資運用業の人的構成要件の一部について緩和を受けられる可能性があります。

外部委託は「丸投げ」ではない

外部委託を利用しても、委託元である投資運用会社の責任がなくなるわけではありません。

委託元に求められる主な対応

  • 委託する業務の内容を理解する
  • 適切な委託先を選定する
  • 委託先へ必要な情報を提供する
  • 委託業務の実施状況を確認する
  • 指摘事項を社内の業務へ反映する
  • 問題が発生した場合の対応方法を定める

コンプライアンス関連業務を登録受託業者へ委託する場合でも、委託業務を適切に監督できる者を確保する必要があります。

つまり、自社で業務を直接処理する体制から、外部の専門事業者を適切に管理する体制へ切り替えられる可能性がある、ということです。

注意点

外部委託を行っただけで、必ず人的構成要件が緩和されるとは限りません。委託する業務の範囲、継続性、社内に残す機能などを具体的に整理する必要があります。

ポイント2|一定の投資運用業では、資本金・純財産額が1,000万円となる

通常の投資運用業では、資本金と純財産額について、それぞれ5,000万円以上が求められます。

ただし、次の条件を満たす場合には、資本金と純財産額の基準が、それぞれ1,000万円となる場合があります。

  • 顧客から金銭または有価証券の預託を受けない
  • 自己と密接な関係を有する者にも、顧客の金銭または有価証券を預託させない

運用会社やその関係会社が顧客資産を預からず、運用機能と資産管理機能を分ける事業モデルが想定されています。

立ち上げ時点で大きな資本を持たない独立系の運用会社にとって、資本負担を抑えられる可能性がある点は重要です。

投資運用業が一律1,000万円になったわけではない

注意したいのは、すべての投資運用業に1,000万円の基準が適用されるわけではないことです。

顧客資産の保管方法、グループ会社との関係、契約内容などによっては、原則どおり5,000万円の基準が適用される可能性があります。

また、最低資本金を用意しただけで登録できるわけではありません。

役員や担当者の経験、内部管理体制、収支計画、事業の継続可能性なども確認されます。

会社を設立して資本金を払い込んだ後にスキームを変更すると、増資や組織変更が必要になることがあります。

会社設立前の段階で、どの資本要件が適用されるのかを確認することが大切です。

適格投資家向け投資運用業も選択肢の一つ

顧客を一定の適格投資家に限定し、運用財産総額を200億円以下とする場合には、適格投資家向け投資運用業を検討できることがあります。

この登録区分では、資本金・純財産額はそれぞれ1,000万円とされ、通常の投資運用業と比べて一部の要件が緩和されています。

ただし、顧客の範囲や運用財産の上限に制限があります。

将来の事業展開も確認しましょう

将来、個人投資家を対象としたい場合や、運用規模を大きくする予定がある場合には、その後の事業展開も踏まえて登録区分を検討する必要があります。

ポイント3|運用権限の全部委託で、分業型の運用体制をつくりやすくなった

制度改正により、運用に関する投資実行権限を、別の投資運用会社へ全部委託できる仕組みが整備されました。

例えば、ファンドの企画や運用方針の策定は自社が担当し、個別銘柄の選定や売買判断などは、その分野に強い別の運用会社へ委託する形が考えられます。

これにより、自社だけでは対応できない資産クラスや運用手法について、外部の専門性を活用しやすくなります。

全部委託しても、委託元の役割は残る

「全部委託」という言葉から、自社では運用に関する判断を一切行わなくてもよいと思われるかもしれません。

しかし、委託元となる投資運用会社には、引き続き次のような役割が残ります。

  • 運用の対象や基本方針を決定する
  • 委託先の能力や実績を確認する
  • 委託先の運用状況を継続的に確認する
  • 契約や運用方針に沿っているかを検証する
  • 問題がある場合に改善要求や委託解消を検討する

日本国内の事業者にとっては、次のような分業も考えられます。

分業型の運用体制の例

  • 自社はファンドの企画と投資家対応を担当する
  • 運用実務は特定分野に強い運用会社へ委託する
  • 計理やコンプライアンスは登録受託業者へ委託する
  • 資産の保管は信託銀行などに任せる

ただし、委託先が増えるほど、契約関係や責任分担は複雑になります。

「誰が最終的に何を決定し、誰が何を確認するのか」を明確にしておくことが重要です。

ポイント4|ガイドブックと概要書により、登録準備の全体像を把握しやすくなった

金融商品取引業の登録では、正式な申請書を提出する前に、管轄する財務局などとの事前相談を進めるのが一般的です。

金融庁は「投資運用業等 登録手続ガイドブック」を公表し、次のような情報を整理しています。

  • 登録区分の考え方
  • 代表的な事業スキーム
  • 登録要件
  • 必要書類
  • 人的構成の考え方
  • 外部委託を行う場合の注意点
  • 自主規制機関やADRへの対応

登録手続を円滑に進めるためには、具体的な業務内容、人的構成、内部管理体制を早い段階で確定させる必要があります。

概要書は、事業スキームを説明するための重要資料

事前相談で使用される主な資料の一つが、「新規・変更登録申請者の概要について」、いわゆる概要書です。

投資運用業の概要書では、会社情報を記載するだけでなく、次のような内容を整理します。

  • どのような金融商品を取り扱うのか
  • 顧客は個人なのか、法人なのか
  • 誰が運用方針を決定するのか
  • 誰が投資判断を行うのか
  • ファンドの販売・勧誘を誰が行うのか
  • どの業務を外部委託するのか
  • 委託先をどのように管理するのか
  • 利益相反や法令違反をどのように防ぐのか
  • 事業を継続できる収支計画になっているか

概要書は、書式の空欄を埋めるだけの書類ではありません。

自社の事業モデルと管理体制を、第三者にも理解できる形で説明するための資料です。

概要書、組織図、業務フロー、社内規程、委託契約、収支計画の内容が一致していることも重要です。

事前相談には一定の期間が必要

金融庁のガイドブックでは、事前相談にかかる期間について、平均的にはおおむね3~4か月程度と案内されています。

ただし、これはあくまで平均的な目安です。

事業スキームが複雑な場合や、途中で株主、役員、担当者、委託先などが変更された場合には、さらに時間がかかる可能性があります。

スケジュールは逆算して考えましょう

営業開始時期が決まっている場合は、会社設立、人材確保、委託先の選定、事前相談、登録申請、自主規制機関への加入準備などを逆算して進める必要があります。

登録準備で起こりやすい5つの失敗

1.最初から「第二種」などと登録区分を決めてしまう

「組合型ファンドだから第二種」と考え、第二種金融商品取引業だけを検討してしまうケースがあります。

しかし、自社でファンド財産の運用まで行う場合には、投資運用業も必要になる可能性があります。

反対に、運用や販売を登録業者へ委託することで、自社に必要な登録が変わる場合もあります。

最初に登録名を決めるのではなく、業務の流れを整理してから登録区分を判断することが重要です。

2.外部委託すれば、社内に経験者がいなくてもよいと考える

外部委託を利用する場合でも、委託内容を理解し、委託先を監督できる人材は必要です。

委託先から報告を受けても、その内容を評価できない体制では、適切な管理とはいえません。

何を委託し、何を自社に残すのかを明確にする必要があります。

3.資本金だけを見て事業計画を立てる

登録準備に必要な費用は、最低資本金だけではありません。

人件費、システム費用、外部委託費、事務所費用、協会加入に関する費用なども考慮する必要があります。

登録後も継続して事業を運営できる収支計画が求められるため、最低資本金ぎりぎりの計画では慎重な検討が必要です。

4.運用と販売を同じ業務として考える

ファンドの運用と、投資家への販売・勧誘は別の行為です。

自社が運用のみを担当し、募集・販売は別の金融商品取引業者へ委託する方法もあります。

反対に、自社で運用と販売の両方を行う場合には、複数の登録が必要になる可能性があります。

5.会社設立や採用を先に進めてしまう

金融商品取引業の登録では、会社形態、役員構成、資本金、株主、担当者の経験、外部委託先などが相互に関係します。

会社を設立し、人材を採用した後に事業スキームを変更すると、追加の採用や増資、役員変更が必要になることがあります。

登録準備は、法人設立より前の構想段階から始めることが重要です。

よくある質問

Q.投資運用業の登録は、以前より簡単になったのでしょうか?

登録審査そのものが簡単になったとは限りません。

ただし、外部委託の活用、一定の場合の人的構成要件の緩和、資本要件の引下げ、運用権限の全部委託などにより、従来より柔軟な組織体制を検討しやすくなりました。「審査が緩くなった」というより、「分業を前提とした事業設計がしやすくなった」と考えるのが適切です。

Q.少人数の会社でも投資運用業を始められますか?

事業内容や外部委託の範囲によっては、比較的少人数の体制を検討できる可能性があります。

ただし、必要人数が一律に決められているわけではありません。業務量、顧客数、運用対象、担当者の経験、内部牽制、外部委託先の管理方法などを踏まえて個別に判断されます。

Q.資本金1,000万円で投資運用業を始められますか?

一定の非預託型投資運用業や適格投資家向け投資運用業では、資本金・純財産額が1,000万円となる場合があります。

ただし、予定している事業が要件に該当するかは、顧客資産の管理方法や顧客の範囲などによって異なります。また、資本金以外の登録要件も満たす必要があります。

Q.ファンドの運用を他社へ任せれば、投資運用業の登録は不要ですか?

具体的な契約関係や業務内容によって異なります。

一定の要件のもとで、組合型ファンドの運用権限の全部を登録済みの投資運用業者などへ委託することにより、ファンド運営者側の投資運用業登録が不要となる仕組みもあります。ただし、形式的に委託契約を結ぶだけでは足りず、法令上の要件を満たしているかを確認する必要があります。

Q.金融商品取引業協会への加入は必須ですか?

法律上、協会への加入は一律に義務付けられているわけではありません。

ただし、協会に加入しない場合には、協会規則に準ずる社内規則や体制を整備することが登録要件となる場合があります。また、苦情処理・紛争解決に関するADR措置も必要です。

まとめ|新規参入のポイントは、必要な機能を適切に分けること

日本の資産運用業への参入について、登録や監督がなくなったわけではありません。

投資者保護のため、人的体制、財務基盤、コンプライアンス、リスク管理、委託先管理などは、引き続き重要です。

一方、現在は、計理やコンプライアンスに関する業務を登録受託業者へ委託したり、運用の投資実行権限を専門の運用会社へ委託したりする事業モデルを検討しやすくなっています。

参入障壁がなくなったというより、必要な機能をすべて一社で抱えるのではなく、専門事業者との分業によって参入する選択肢が広がったといえます。

登録準備で最初に行うべきことは、申請書を作ることではありません。

どのような商品を取り扱い、誰が投資判断や販売を行い、どの業務を外部へ委託するのかを具体的に整理することが重要です。

※本記事は、2026年7月時点で公表されている金融庁資料をもとに、制度の一般的な内容を解説したものです。

必要となる登録区分や資本要件、人的体制は、具体的な事業内容、契約関係、顧客の属性などによって異なります。実際に事業を開始する際は、金融庁・管轄財務局などの関係機関へ事前に確認することをおすすめします。

参考資料