行政書士が解説!電子公正証書とは?対面方式とリモート方式の違いをわかりやすく解説

 

 

こんにちは。行政書士の秋元志保です。

 

近年、「電子公正証書」という言葉を耳にする機会が増えてきました。

 

これは、これまで紙で作成していた公正証書を電子データ(電磁的記録)で作る仕組みのこと。

 

相続や遺言、会社契約、金銭貸借など、私たち行政書士の業務とも密接に関わる大きな制度改正です。

 

今回は、「電子公正証書とは何か」「対面方式とリモート方式の違い」「どんなものが対象になるのか」について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。

 

 


 

◆ 電子公正証書とは?

 

従来の公正証書は、公証役場に出向き、本人確認・読み合わせ・署名押印をして作成していました。

電子公正証書では、これらのプロセスがデジタル上で完結します。

 

署名捺印 → 電子署名

読み合わせ → Web会議

正本・謄本 → クラウドやCDで電子交付

送達 → 電子送達も可能

 

つまり、「法的な効力はそのままに、作成手続をオンライン化」したのが電子公正証書です。

 

役場への出向が不要になり、全国どこからでも作成できるようになった点が最大の特徴です。

 

 


 

◆ 対面方式とリモート方式の違い

 

電子公正証書の作成には、「対面方式」と「リモート方式」があります。

どちらも最終的には電子署名を行いますが、本人確認方法や作成場所が異なります。

 

項目 対面方式 リモート方式
作成場所 公証役場で行う 自宅や事務所など、役場外から参加
本人確認 公証人が直接、原本で確認 実印+印鑑証明書を郵送し、Web上では顔確認なし
読み合わせ 公証人が対面で読み上げ Web会議で画面共有しながら実施
委任状 紙の委任状+印鑑証明書 電子署名付きの電子委任状も可能
正本・謄本交付 紙または電子交付(CD・クラウド) 紙郵送または電子交付を選択
公証人の裁量 原則すべて対応可 高齢者や認知症などは慎重に判断される

 

 


 

◆リモート方式が認められる主な条件

 

① 嘱託人(依頼者)の希望があること

依頼者が「出頭せずにリモートで作成したい」と申し出る必要があります。

 

② 公証人が「相当」と判断すること

公証人が次の点を総合的に判断して認めた場合に限られます。

1. 出頭が難しい合理的な理由(病気、遠隔地、離島など)

2. 通信環境が安定しており、Web会議で意思確認が可能

3. 電子署名を正しく行える機器が整っている

 

③ 当事者全員の同意があること

契約書など複数の人が関わる場合、全員がリモートで行うことに同意している必要があります。

 

④ 本人確認と資料提出が確実にできること

実印を押した申請書と印鑑登録証明書を郵送または提出する

顔写真付き身分証の写しを提出する(画面提示も可能)

 

⑤ 公証人の慎重な判断が必要なケース

高齢者(65歳以上)や認知症の方の遺言などは、リモート方式では慎重に扱われる

紛争性の高い案件や高額取引は、原則として対面方式が推奨される

 

 

 


 

 

 

◆ 電子化の対象と対象外

電子公正証書は原則すべての案件に対応しますが、次のような例外もあります。

 

対象外の主な例:

  • 保証意思宣明公正証書(保証人意思確認を対面で行う必要があるため)
  • 被後見人の遺言(判断能力確認が困難)
  • 添付図面が大きい場合(電子データ化が困難)
  • 原本確認が求められる附属書類

 

つまり、「人の意思確認や原本確認が重要な手続き」は紙のまま残されます。

 

ただし、今後は添付資料の電子化やWeb原本確認制度の整備が進み、対象範囲が広がる見込みです。

 

 

 


 

◆ 電子公正証書のメリット

  • 公証役場への出向が不要(遠方の方・高齢者に特に便利)
  • 作成スピードの向上(やり取りはメールとクラウドで完結)
  • 書類保存・保管の手間軽減
  • 他の行政手続(登記・契約電子化)との連携が容易
  • 出張費や郵送費の削減

 

一方で、電子署名やクラウドの利用にはパソコン操作など一定の準備が必要です。

 

事前に環境整備をサポートすることも、行政書士の大事な役割になっていくでしょう。

 

 

 


 

◆ 「電子公正証書」が基本に

 

法務省と日本公証人連合会は、公正証書は原則として電子化していくという方針を示しています。

 

当面は紙と電子の併用期間ですが、将来的には、執行文や送達も電子的に行えるよう法改正が進む予定です。

 

これは、社会全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の一環であり、行政書士業務においても「電子契約」「電子定款」「電子申請」と並ぶ、重要な実務インフラの変革といえます。

 

 


 

◆ まとめ:行政書士としての支援のかたち

 

電子公正証書は、利便性の向上だけでなく、「本人の意思を正確に残す」信頼性を保つ制度です。

 

今後は、遺言や契約、公証役場での手続きをオンラインで行う機会が増え、行政書士には「事前準備」「デジタル環境整備」「本人確認補助」のサポートが求められます。

 

制度が変わっても、「人の想いを正しく形にする」という本質は変わりません。

 

電子化の時代だからこそ、行政書士が寄り添うサポートがますます重要になると感じています。

 

 

【参考資料・引用先】
・法務省「電子公正証書制度の概要」(2024年)
・民法第1012条(遺言執行者の権限)

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