【2027年開始】技能実習はなぜ終わる?育成就労制度で変わる5つの常識

 

こんにちは。エール行政書士法務事務所です。

「技能実習制度がなくなると聞いたけれど、今いる実習生はどうなるのか」

「育成就労制度では、外国人が転職できるようになるのか」

「企業側は、今から何を準備すればよいのか」

このような不安を感じている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

2027年4月1日から、これまでの技能実習制度は、新しい在留資格制度である「育成就労制度」へ大きく変わります。

結論からいうと、育成就労制度は単なる名称変更ではありません。

外国人材を「一時的な労働力」として受け入れる時代から、企業が責任をもって育成し、特定技能へつなげる時代へ移行する制度です。

この記事でわかること

・技能実習制度が見直される理由

・育成就労制度で変わる5つのポイント

・本人意向の転籍に関する注意点

・企業が2026年から準備すべきこと

育成就労制度とは?技能実習との大きな違い

育成就労制度は、原則として3年間の就労を通じて、外国人材を特定技能1号の水準まで育成することを目的とする制度です。

これまでの技能実習制度は、建前としては「日本で学んだ技能を母国に移転する国際貢献」が目的でした。

しかし、実際の現場では、多くの業界で人手不足を支える労働力として機能してきた面があります。

その結果、制度の目的と現場の実態とのずれ、転籍制限、失踪、人権侵害リスクなどが大きな課題となっていました。

育成就労制度では、このずれを見直し、人材育成と人材確保を正面から制度目的に位置づけています。

ポイント

これからの外国人雇用では、「人を受け入れること」だけでなく、「育てて、定着してもらうこと」まで見据えた体制づくりが重要になります。

常識1:原則「転職できない」から、条件付きで転籍可能へ

育成就労制度で最も大きな変更点のひとつが、本人意向による転籍です。

技能実習制度では、実習生本人の希望による転籍は原則として認められていませんでした。

これに対し、育成就労制度では、一定の要件を満たせば、本人の意向による転籍が認められます。

ただし、自由に何度でも転職できる制度ではありません。

本人意向の転籍に必要な主な要件

・同じ業務区分内での転籍であること

・分野ごとに定められた技能水準を満たしていること

・分野ごとに定められた日本語能力を満たしていること

・転籍制限期間を超えて就労していること

・民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと

・転籍先が一定の要件を満たす受入れ機関であること

本人意向の転籍が認められることで、外国人材にとっては、不適切な職場環境から離れやすくなるという面があります。

一方で、受入れ企業にとっては、これまで以上に「選ばれる職場」であることが重要になります。

転籍者の割合にも上限がある

育成就労制度では、転籍を受け入れる企業側にも一定の制限があります。

本人意向による転籍者が、転籍先企業の育成就労外国人全体に占める割合は、原則として3分の1を超えることができません

また、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫などの大都市圏等については、地方からの過度な人材流出を防ぐため、さらに厳しい上限が設けられています。

実務上の注意点

今後は「転籍できないから辞めないだろう」という考え方は通用しにくくなります。給与、労働時間、相談体制、日本語学習、生活支援などを含め、外国人材が安心して働き続けられる環境づくりが必要です。

常識2:「日本語教育」は任意ではなく、実務上の重要課題へ

育成就労制度では、3年間で特定技能1号へ移行できる人材を育てることが大きな目的です。

そのため、日本語能力はこれまで以上に重要になります。

入国時、就労中、転籍時、特定技能への移行時など、さまざまな場面で日本語能力が問われることになります。

つまり、日本語教育は「本人に任せるもの」ではなく、企業の受入れ体制の一部として考える必要があります。

日本語教育を軽視した場合のリスク

・現場での指示が伝わらず、事故やミスにつながる

・本人が孤立し、早期離職や転籍希望につながる

・特定技能への移行がスムーズに進まない

・受入れ機関としての評価に影響する可能性がある

日本語学習を単なるコストと考えるのではなく、安全管理・生産性向上・定着率向上のための投資と考えることが大切です。

常識3:転籍時には「初期費用の補填」ルールがある

本人意向による転籍が認められると、受入れ企業側には「育成にかけた費用が無駄になるのではないか」という不安が生じます。

この点について、育成就労制度では、転籍前の受入れ機関が負担した初期費用について、一定の補填を受けられる仕組みが設けられています。

転籍先の企業は、転籍元の企業が負担した一定の初期費用について、就労期間に応じた割合で補填することになります。

初期費用補填の按分率

転籍元で就労した期間 転籍先が補填する按分率
1年6か月未満 6分の5
1年6か月以上2年未満 3分の2
2年以上2年6か月未満 2分の1
2年6か月以上 4分の1

この仕組みにより、転籍元企業の負担にも一定の配慮がされています。

ただし、補填があるから安心というわけではありません。

人材が短期間で離れてしまうこと自体が、現場の戦力計画や教育体制に大きな影響を与えます。

ここが重要です

最初の1年から1年半は、本人との信頼関係をつくる重要な期間です。入社直後のフォロー、生活面の説明、職場での相談体制を整えることが、定着率に大きく影響します。

常識4:民間紹介による「引き抜き」は認められない

本人意向の転籍が認められると、悪質な紹介事業者による引き抜きが増えるのではないかと心配する企業もあります。

この点について、育成就労制度では、本人意向の転籍にあたり、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことが要件とされています。

転籍支援は、監理支援機関、外国人育成就労機構、ハローワーク等が関与する形で行われることが想定されています。

これにより、外国人材を手数料目的で動かすような不透明なビジネスを防ぎ、制度の健全性を保つ狙いがあります。

企業が注意すべきこと

・民間紹介会社から「育成就労の転籍者を紹介できる」と営業された場合は慎重に確認する

・転籍希望者を受け入れる場合は、紹介ルートを記録しておく

・監理支援機関や公的窓口と連携して進める

知らずに不適切なルートを利用すると、育成就労計画の認定や受入れ体制の評価に影響する可能性があります。

常識5:「監理団体」は「監理支援機関」へ。審査と責任が重くなる

技能実習制度で受入れ企業をサポートしてきた監理団体は、育成就労制度では監理支援機関として再編されます。

ただし、現在の監理団体が自動的に監理支援機関になれるわけではありません。

育成就労制度で監理支援機関として業務を行うためには、新たに許可を受ける必要があります。

監理支援機関に求められる主なポイント

・監理支援体制の整備

・外部監査人の設置

・役職員の適正な配置

・受入れ企業との独立性・中立性

・外国人への相談支援体制

受入れ企業としては、現在付き合いのある監理団体が、新制度でも監理支援機関として許可を受けられるのか、早めに確認しておく必要があります。

制度開始直前になってから確認すると、受入れスケジュールに影響する可能性があります。

 

2026年は準備の年。企業が今から確認すべきこと

育成就労制度の施行日は2027年4月1日です。

ただし、実務上は2026年から準備が本格化します。

出入国在留管理庁のQ&Aでは、2026年4月15日から監理支援機関の許可、2026年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請を外国人技能実習機構で受け付ける予定とされています。

企業が確認しておきたいチェックリスト

・現在受け入れている技能実習生の在留期間・移行予定

・今後受け入れたい分野が育成就労の対象分野に含まれるか

・監理団体が監理支援機関の許可申請を行う予定か

・日本語教育の支援体制があるか

・給与、労働時間、住居、相談体制に問題がないか

・転籍希望が出た場合の対応ルールを社内で決めているか

・特定技能1号への移行を見据えた育成計画があるか

育成就労制度では、単に人を受け入れるだけではなく、3年後を見据えた育成計画が重要になります。

 

よくある質問

Q. 技能実習生は2027年4月1日以降、すぐにいなくなりますか?

すぐに全員がいなくなるわけではありません。既に技能実習として在留している方については、経過措置が設けられる場合があります。ただし、個別の在留期間、技能実習計画、移行時期によって扱いが異なる可能性があるため、早めの確認が必要です。

Q. 育成就労では、外国人は自由に転職できますか?

自由に転職できる制度ではありません。同一業務区分内であること、技能・日本語能力、転籍制限期間、転籍先の要件、民間職業紹介事業者の不関与など、複数の要件があります。

Q. 受入れ企業にとって一番大きなリスクは何ですか?

大きなリスクは、制度変更を「名前が変わるだけ」と考えて準備を遅らせることです。育成計画、日本語教育、労務管理、相談体制、監理支援機関との連携などを早めに整えておかないと、受入れ開始や移行に支障が出る可能性があります。

まとめ:これからは「選ばれる企業」になる準備が必要です

育成就労制度は、技能実習制度の単なる後継制度ではありません。

外国人材を安価な労働力として受け入れる時代から、企業が責任をもって育成し、長く活躍してもらう時代への転換です。

今後は、コンプライアンスを守り、外国人材を大切に育てる企業ほど、安定した人材確保につながりやすくなります。

一方で、労務管理や支援体制が不十分な企業は、転籍や受入れ制限などのリスクに直面する可能性があります。

2027年4月の施行を見据え、2026年のうちから準備を始めることが大切です。

 


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参考・引用

本記事は、2026年6月29日時点で確認できる公表情報をもとに作成しています。今後、運用要領・分野別基準・Q&A等が更新される可能性がありますので、実際の手続きでは最新情報をご確認ください。

・出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html

・出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001452485.pdf

・外国人技能実習機構「育成就労制度について」
https://www.otit.go.jp/employment_for_skill_development/

・外国人技能実習機構「監理支援機関許可施行日前申請」
https://www.otit.go.jp/employment_for_skill_development/03/