【ちょっと息抜き☕ペンギンコラム🐧】AIと士業、どこまで仲良くしていい?|弁護士会の生成AIガイドラインを行政書士目線で考える


こんにちは。

行政書士の秋元です。

最近、仕事でもプライベートでも、すっかり身近になった生成AI。

文章を考えてもらったり、長い資料を要約してもらったり、アイデアを出してもらったり。

「ちょっとこれ、AIに聞いてみよう」

という場面が、以前よりずっと増えた方も多いのではないでしょうか。

私自身も、以前このペンギンコラムで「行政書士のためのAI勉強会」についてご紹介しました。

そのときも、

「AIを怖がって使わない」のではなく、特徴やリスクを知ったうえで上手に付き合っていくことが大切。

と感じました。

そんな中、士業にとって少し気になる資料が公表されています。

東京弁護士会では、弁護士業務に生成AIを利用する際の留意点を整理した「弁護士業務における生成AIサービスの適正利用ガイドライン」を策定しています。

さらに、東京弁護士会の会報「LIBRA」でも、生成AIを業務で利用する際の注意点や具体的な考え方が詳しく紹介されています。

もちろん、これは弁護士向けのガイドラインです。

行政書士にそのまま適用されるものではありません。

ただ、内容を読んでみると、

「これ、行政書士にもかなり関係ある話では?」

と思う部分がたくさんありました。

今回は少し息抜きの「ペンギンコラム🐧」として、行政書士の仕事とAIについて考えてみたいと思います。

今回のペンギンポイント🐧

  • AIを使うこと自体が問題なのではなく、「どう使うか」が重要
  • 依頼者の個人情報・秘密情報を安易にAIへ入力しない
  • AIの回答は必ず正しいとは限らない
  • 法令・制度については公的な一次資料で確認する
  • AIが作った文章でも、最終的な責任は専門家側にある
  • 事務所内でAIを使う場合は、ある程度のルール作りも大切

AIはもう「使うか、使わないか」だけの話ではない

生成AIが登場した当初は、

「仕事がAIに奪われるのでは?」

「士業の仕事がなくなるのでは?」

という話をよく耳にしました。

でも、実際に使ってみると、少し違う景色が見えてきます。

  • メール文章を整える
  • 長い資料の論点を整理する
  • 文章の構成案を考える
  • 公開資料を分かりやすく説明するための下書きを作る
  • アイデアを出してもらう

こうした作業では、AIはかなり便利です。

東京弁護士会の資料でも、AIの利用そのものを否定するのではなく、業務で活用する際のリスクや注意点を整理するという考え方が示されています。

「AIを使ってはいけない」という話ではなく、「どう使うか」が問題になっている。

これは行政書士も同じではないでしょうか。

一番怖いのは「便利だから全部入れてしまう」こと

東京弁護士会の資料を読んでいて、行政書士として特に気になったのが情報管理です。

行政書士の仕事では、かなり多くの個人情報を扱います。

特に在留資格業務では、

  • パスポート
  • 在留カード
  • 住所・生年月日
  • 勤務先・給与
  • 家族関係
  • 学歴・職歴
  • 納税状況
  • 個人的な事情

まで確認することがあります。

申請理由書などを作るために、依頼者の人生そのものを聞くような場面もあります。

そんな情報を、

「AIにまとめてもらえば早いから」

という理由だけで、そのまま入力してよいでしょうか。

ここはかなり慎重になる必要があります。

依頼者の氏名、住所、在留カード番号、パスポート情報、家族事情などを、利用条件を確認せずそのままAIへ入力することは避けた方がよいでしょう。

東京弁護士会の資料では、生成AIサービスを利用する際に、

  • 入力した情報が学習などに利用されないか
  • サービス提供事業者が情報へアクセスできるか
  • セキュリティ対策はどうなっているか
  • 保存された情報を削除できるのか

といった点を確認する考え方が示されています。

また、秘密情報や個人情報については、匿名化・抽象化したうえで利用する、必要に応じて本人の同意を検討する、あるいは「そもそも入力しない」という判断も必要になります。

これは行政書士にも、そのまま参考になる考え方だと思います。

「有料版だから安全」と決めつけるのも危険

もう一つ気を付けたいのが、

「有料版だから大丈夫」

「有名なAIだから大丈夫」

という思い込みです。

AIサービスには、同じサービス名でも、個人向けと法人向けなどで契約条件やデータの扱いが異なる場合があります。

「○○というAIを使っているから安全」と判断するのではなく、自分が実際に利用しているプランや設定を確認することが大切です。

AIサービスは変化が非常に速く、設定や利用条件が変わることもあります。

「前に確認したから大丈夫」ではなく、ときどき見直す必要もありそうです。

便利になるほど確認することも増えますね(笑)。

AIは、ときどき自信満々に間違えます

これはAIを使ったことがある方なら、一度くらい経験があるかもしれません。

AIは、

知らないことでも、それらしい文章で答えることがあります。

いわゆる「ハルシネーション」です。

東京弁護士会の資料でも、生成AIはもっともらしい文章を作る一方、内容が正しいとは限らず、架空の判例や誤った引用などの問題があることが指摘されています。

これは在留資格業務でもかなり怖いところです。

例えばAIに、

「経営・管理ビザの最新要件を教えて」

「特定技能2号への変更要件は?」

「この場合、永住申請できますか?」

と聞く。

すると、とても自然な文章で答えてくれることがあります。

でも、

文章が上手だからといって、内容が正しいとは限りません。

古い制度と新しい制度を混ぜてしまうこともあります。

実際には存在しない要件を、それらしく説明する可能性もあります。

特に入管制度は法改正や運用変更もあるため、AIの回答だけで判断するのは危険です。

AIは「調べる入口」にはなっても、「最後の確認者」にはできない。

私は、この考え方がかなり重要だと思っています。

「AIが作ったので間違えました」は通用しない

例えばAIを使って、申請理由書の下書きを作ったとします。

AIが事実とは違う内容を書いていた。

それを確認せず、そのまま申請してしまった。

そんな場合に、

「これはAIが書いた文章なんです」

と言っても、行政書士としての責任がなくなるわけではありません。

最終的に書類を確認し、依頼者に説明し、専門家として提出するのは人間です。

AIとの付き合い方を少し乱暴に例えると……

「とても優秀だけれど、ときどき自信満々に間違える新人さん」に手伝ってもらうくらいの感覚が、ちょうどいいのかもしれません。

ものすごく仕事が速い。

文章もうまい。

疲れない。

何度修正をお願いしても怒らない。

でも、ときどき堂々と間違える(笑)。

そう考えると、

「確認せずに外へ出してはいけない」

というのも分かりやすい気がします。

行政書士の仕事でAIを使うなら、ここは線引きしたい

私自身、AIそのものを否定するつもりはありません。

むしろ、上手に使えば行政書士業務の効率化にはかなり役立つと思っています。

AIと相性がよさそうな作業

  • 公開資料の整理
  • 文章構成の案出し
  • 一般的なチェックリストのたたき台
  • メール文章の調整
  • コラムや説明資料の構成検討

慎重になった方がよい使い方

  • 依頼者のパスポートをそのままアップロードする
  • 在留カードの画像をそのまま入力する
  • 個人を特定できる相談内容を、そのままAIへ入力する
  • AIが作った法令説明を確認せず依頼者へ伝える
  • 生成された申請理由や事実関係を確認せず使用する

特にスタッフがいる事務所では、

「各自の判断で好きなAIを使ってください」

という運用も、少し怖いところがあります。

行政書士事務所でも、

  • どのAIサービスを利用してよいか
  • 何を入力してよいか
  • 何は入力してはいけないか
  • AIが作ったものを誰が確認するか

くらいは、事務所内で決めておいた方がよいと思います。

著作権も忘れてはいけません

AIというと、個人情報や情報漏えいに目が向きがちですが、もう一つ注意したいのが著作権です。

例えば、

  • 他人が作った文章や画像をAIへ入力する
  • 生成された画像をホームページで利用する
  • 既存の記事にかなり似た文章をそのまま公開する

といった場面では、著作権の問題が生じる可能性があります。

「AIが作ったものだから、何に使っても自由」と単純に考えないことも大切です。

行政書士事務所でも、ホームページ、SNS、コラム、画像作成などで生成AIを利用する機会は増えています。

AIを使う場面が広がるほど、「入力するもの」と「生成されたもの」の両方について注意が必要になりそうです。

便利になっても、最後に必要なのは「人」

以前のペンギンコラムで、私は行政書士に大切なのは「聞く力」だと書いたことがあります。

AIがどれだけ進化しても、この部分はあまり変わらないのではないかと思っています。

依頼者が、

「ビザを取りたいです」

と言ったとき。

本当に聞かなければならないのは、その一言だけではありません。

  • なぜ日本にいたいのか
  • どのような仕事をしているのか
  • 家族はどうしているのか
  • 何に困っているのか
  • 本人もまだ気付いていない問題はないのか

そうした事情を聞き取って、制度と現実をつなぐのが専門家の仕事です。

AIは、聞いた情報をきれいな文章にまとめることは得意です。

でも、

「この人は、本当は何に困っているのだろう?」

と考えるところまで、全部を任せてよいとは思いません。

AIに仕事を奪われるより怖いこと

「AIに行政書士の仕事が奪われる」

という話を聞くことがあります。

でも、今の私が少し怖いと思うのは、そこではありません。

それより怖いのは、AIが便利すぎて、専門家自身が確認しなくなることです。

法律を確認しない。

原文を読まない。

依頼者の話を十分に聞かない。

「AIがこう言っています」で判断してしまう。

これでは、AIを使って仕事が速くなったとしても、専門家としての仕事の質は下がってしまいます。

弁護士と行政書士では、業務の内容も責任も異なります。

それでも、

「AIに任せる部分」と「人間が責任を持つ部分」を決めておく。

という考え方は、士業全体に共通するのではないでしょうか。

AIとの付き合い方🐧

せっかくのペンギンコラムなので、最後に少しだけまとめてみます。

🐧 AIと仲良くするための5か条

① 個人情報を何でも入れない

便利だからといって、依頼者の情報をそのまま入力しない。

② AIの答えをそのまま信じない

特に法律・制度・行政手続は一次資料で確認する。

③ 事実関係は人間が確認する

申請理由書や説明文に、事実と違う内容が入っていないか確認する。

④ AIに任せるところと、人がやるところを分ける

整理や下書きはAI、判断と最終確認は人。

⑤ ときどきルールを見直す

AIは変化が早いので、使い方や設定を定期的に確認する。

まとめ|AIとは、ほどよい距離で仲良く

以前、AI勉強会を開催したとき、

「苦手意識を持たずに、まずはいろいろ試してみる」

そして、

「AIとは仲良く付き合っていくことが、今後の業務には不可欠」

と書きました。

今も、その考えは変わっていません。

ただ、少し付け加えるなら、

仲良くするなら、相手の性格を知っておくこと。

AIは便利です。

とても仕事が速いです。

自分では思いつかなかった視点を出してくれることもあります。

でも、間違うこともある。

預けてはいけない情報もある。

そして最後に責任を負うのは、AIではありません。

私たちです。

ペンギンもAIも、ほどよい距離感が大切なのかもしれません🐧

これからも新しいものを怖がりすぎず、でも専門家として確認すべきところは手を抜かず、AIとうまく付き合いながら行政書士として提供できるサービスの質を高めていきたいと思います。


出典・参考:

東京弁護士会「生成AIサービスの適正な業務利用に向けて―東弁ガイドラインと事業者照会を踏まえて―」
https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2026_06/P25-27.pdf

東京弁護士会「LIBRA 2026年7・8月合併号 弁護士業務における生成AIの利活用と留意点」
https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2026_0708/P02-18.pdf

※本記事は東京弁護士会が公表している資料を参考に、行政書士業務に置き換えて筆者の考えをまとめたものです。東京弁護士会のガイドラインは弁護士向けのものであり、行政書士に直接適用されるものではありません。また、生成AIサービスの仕様・利用条件・データの取扱い等は変更される可能性があります。実際に利用する際は、利用しているサービスの最新の規約・設定等をご確認ください。